クールシニアのウェブマガジン

毎週月・金曜日発行

クールは「カッコイイ」ですが、背筋をのばして歩く60+シニアの情報を集めます。

Edit

エディター

中村 滋 Shigeru Nakamura

BE-PAL、DIME、サライなどライフスタイル雑誌を創刊。

カテゴリ:ホビー 

4階ビルを超える竹とんぼ

竹とんぼ作りに熱中していたときがあります。なにしろ作り方次第でとんでもなく飛び、飛びすぎるためペラに色を塗って、見失わないようにするくらいです。きっかけはその昔、秋岡芳夫さんという面白い人を取材したことでした。

 左が秋岡さんに教えてもらって作った竹とんぼ。ペラの形はいろいろですがよく飛びます。ただ厚い竹を削るのではなく、芯棒がねじってあって重心がずれないようになっていたり、ペラに鉛を入れて回転トルクを増すなどの工夫があります。右は新潟の竹とんぼ作りの名人が作ったもの。国際竹とんぼ協会(今でもあります)の大会で優勝したモデル。ペラのピッチが薄いのがありますが、高く上がるのではなく滞空時間の長いタイプです。競技には高さ、滞空時間、水平距離などあって、作り方が違います。はじめは竹とんぼの話だったのですが、そのうち縁浅からぬ人だと言うことがわかりました。秋岡さんは大好きだったモーターサイクルにかかわったインダストリアル・デザイナーだったのです。

 1950年代から60年代にかけて日本のモーターサイクル産業は百花繚乱、ホンダやヤマハ、スズキだけでなくいろんな企業がオートバイを作っていました。ブラーザーミシンもバイクを出していたんです。その中に丸正自動車という会社が作っていたライラックというブランドのモーターサイクルがありました。本田宗一郎の下で働いていた伊藤さんが独立して立ち上げたメーカーで、高性能車を作るもビジネスとしてはうまくいかず消滅します。Vツインエンジン、シャフトドライブなどが特徴だったのですが、なにより当時のモーターサイクル少年をとりこにしたのはそのデザイン。なかでもベビーライラックや、スクーターのライラック・モペット(写真は会場で売られている秋岡芳夫展の目録)のデザインは秀逸で、今でも通用するどころかこっちの方がすばらしい。スクーターはライラックではなく、三菱自動車からシルバーピジョンとして発売されるのですが、残念ながらオリジナルの前後輪片持ちから前輪タイヤは両持ちサスペンションに変更されました。秋岡さんがかかわったデザインはたくさんあって、ゼンザブロニカという6×6判のカメラや露出計セコニック、それに三菱鉛筆のUNIもそうです。その現物を今、見ることができます。

 東京・目黒の目黒美術館で秋岡芳夫展が開かれています。初期は鉛の重りを埋め込んだものでしたが、竹と金属が融合した進化した数百のスーパー竹とんぼ、ライラックのスクーター、それに手と器の大きさにこだわった秋岡さんの道具コレクションは一見の価値があります。クリスマスまでやってます。

ページtopへ