クールシニアのウェブマガジン

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クールは「カッコイイ」ですが、背筋をのばして歩く60+シニアの情報を集めます。

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エディター

中村 滋 Shigeru Nakamura

BE-PAL、DIME、サライなどライフスタイル雑誌を創刊。

カテゴリ:メディア 

消費社会から関係の豊かな社会へ

・あの名器ストラデバリウスのヴァイオリン、バンクシー(オークションで落札された絵をシュレッダーにかけて話題になった作家)の絵画、プライベートジェット、そして宇宙旅行・・・いずれもメディアによく登場する通販プラットフォーマーのトップが購入したものです。典型的な消費主義価値観の持ち主といえます。

・ヴェルサイユ宮殿で2度目の結婚式を挙げたカルロス・ゴーン氏も同じかもしれません。ただ今どき、このライフスタイルはどうなんでしょう。

 

・実はこうした消費主義では幸福度は逆に下がるということが、世論調査や学術的データからわかってきたそうです。

NHKBS放送に「世界街歩き」という番組があります。ヨーロッパ編を見ていると、夕暮れに人々が海岸や水辺の遊歩道や広場に出てきて、のんびりと時を過ごす シーンが出てきます。

・地元のほとんどの人が、生まれ育った街を「ここは素晴らしいところだ、この風景を残したい」と語ります。さらに不思議なことに、鍛冶屋、鋳掛屋、本の装丁修理、古楽器の修繕、ビンテージバイクのレストアなど、日本では消えつつある職人がまだ生き残っていることです。

・経済的には豊かではないのかもしれませんが、精神的には豊かさを感じます。

 

・そんなことを思い出させる本を最近手にしました。「幸せのマニフェスト」(コモンズ刊四六判並製3603000円+税)というイタリアのステファーノ・バルトリーニなる経済学者が書いた本です

消費社会から関係の豊かな社会へというサブタイトルに続いて、帯には日本はアメリカ信仰からそろそろ抜け出し、もっとヨーロッパに目を向けてみよう。ゆるやかなつながり、ゆとりある時間、働き方、環境、そして幸福・・・。調査データ(主にアメリカ)による結論からの、気になるフレーズをいくつかピックアップしてみます。

 

・「消費主義に走る人間の幸福度は低い」「ストレスを感じ、不安やうつ病などの精神疾患に罹る確率が高い」「頻繁にテレビを見、アルコールや薬物を多く消費」「米国では消費主義的価値観が普及、経済的に富裕であることが人生の目的という大学生の割合が、1970年の39%から1995年に74%」「人間関係悪化の上に成り立つ経済成長メカニズム」「労働時間が増え、高い経済成長を経験する反面、幸福度は低下する」。

・消費主義的価値観は、人間関係の質が悪くなり、他者に寛容になれないと指摘します。アメリカに限らず日本でも同じようなことが起こっている気がします。

・いじめやパワハラを感じる人間が増え、希薄な人間関係を好み、怒りを爆発させ、ストレスを多く抱えている・・・とかとか。

 

・バルトリーニ氏の論によれば、解決策は、消費主義を見直して、人と人がゆるやかに交わる社会を作ることだと言います。自動車より自転車や歩行者を優先する広場や街区を作り、きれいな空気、水、緑の多い環境を増やす・・・これは車中心で街を作ったアメリカは無理ですね。日本はその点ヨーロッパに近く、歴史的街並がまだたくさんあります。

 

・国連が発表した2018幸福度ランキングによれば、1位フィンランド2位ノルウェー3位デンマークと上位は北欧の福祉国家です。国内では3回連続幸福度トップは福井県です。いずれも消費を謳歌する土地ではなく、経済成長や国力と幸福度は比例しません。

・こういう考え方は、経済人からは負け犬の考え方という声が返ってくるかもしれませんが、日本のような成熟国では、もはや豊かな社会とは大邸宅、高級車、絵、楽器を買うことではないと思いますが・・・。

AI時代を前に、転換点を迎えているような気がします。

次号127日金曜日

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