クールシニアのウェブマガジン

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エディター

中村 滋 Shigeru Nakamura

BE-PAL、DIME、サライなどライフスタイル雑誌を創刊。

カテゴリ:野遊び 絶滅倶楽部 

昔風景スケッチ旅「七ヶ宿」

 東京・世田谷にある向井潤吉アトリエ館に行ってきました。日本の民家、とくに消えゆく茅葺き屋根を描き続けた向井潤吉画伯のアトリエ兼自宅が美術館になっています。ここで向井潤吉「陸奥(みちのく)への旅」という企画展(7月末で終了)をやっていて、その中の「山家雪意」油彩1961年という作品を見るためです。
 というのは宮城県の七ヶ宿街道関宿横川に、向井潤吉さんが描いたその茅葺き民家が今も残っていたからです。七ヶ宿街道は蔵王の南麓、山形県上山と宮城県国見を結ぶ羽州街道の、湯原、峠田、滑津、関、渡瀬、下戸沢、上戸沢の七つの宿場を結ぶかつての街道ですが、日本ののどかな昔風景が続くといわれていて、一度訪ねたいと思っていました。
 街道沿いに見ることのできる茅葺き民家はわずかで、滑津の二棟(安藤家とその反対側の蕎麦屋)と作品「山家雪意」に描かれた関・横川、それに下戸沢ぐらいでした。渡瀬は七ヶ宿ダムの湖底に沈んでいます。それにしても消えゆく茅葺きが51年前とさして変わらずよく残っていたものです。横川は関から街道を離れ遠刈田温泉へ向かう南蔵王七ヶ宿線を車で5分ほど走ったところにあります(画伯はこの場所を半世紀前にどうやって見つけたんでしょうか)。別の崩れかかった茅葺きの家の前にいたおばあさんも「昔はたくさんあったんだけどね、年寄りだけではどうにもならない」といっていました。

その昔、参勤交代や出羽三山詣りで賑わった七ヶ宿街道・滑津の安藤家住宅。天保年間、幕府や諸大名が本陣として利用した家で、寄せ棟作りの正面、街道に面して千鳥破風式棟飾りの玄関が当時を偲ばせます。現在も住居として使われていて非公開です。築280年。

隣の農家の軒先。夏のこの季節、農家は自家用のタマネギをぶら下げたり干したりしています。

これが関・横川の、向井潤吉画伯が描いた茅葺き民家の今。葉の落ちた秋の「山家雪意」とちがい夏なのと、家の前の小屋が大きくなって正面を塞いでいます。

裏側はこんな感じで今なお風情があります。画とちがい屋根がきれいなので葺き直したのかもしれません。

七ヶ宿街道は七ヶ宿ダムのさきで仙台に向かう国道113号と分かれて峠道(小坂峠を越え東北自動車道国見ICへ)になります。宿場があったとは想像できない下戸沢。たぶん使われていない街道沿いの茅葺き民家。

静かな住宅街の中なので迷いましたが、木立に囲まれた屋敷に今も向井潤吉の表札がかけてありました(画と家屋を寄付し世田谷美術館別館)。東急田園都市線駒澤大学駅から徒歩10分。観覧料は一般200円、65歳以上のシニアは100円です。(水彩スケッチ画・雪村 旬)画の無断転載不可

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