クールシニアのウェブマガジン

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クールは「カッコイイ」ですが、背筋をのばして歩く60+シニアの情報を集めます。

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エディター

中村 滋 Shigeru Nakamura

BE-PAL、DIME、サライなどライフスタイル雑誌を創刊。

カテゴリ:絶滅倶楽部 

デジタル化で消えるプロの筆記具

電子テープライターの台頭でビジネス用文具から撤退し、ファンシー文具としてほそぼそと生き延びているダイモですが、パソコンの登場で絶滅した、あるいは消えつつあるプロ用筆記具があります。

一番上、グラフィックデザイナーのための0.3ミリ芯のシャープペンシル「ぺんてるメカニカ」、中央がコピーライター、取材記者に人気だった0.92ミリ芯シャープペンシルの名機「モンブランPIX No.75」、そしていまのところ手に入るカランダッシュの純銀ボールペン。いずれもIT革命の被害者たち。

 ぺんてるMechanica。現在、雑誌のレイアウトはマックなどのパソコンでデザインしますが、ほんの10年ほど前はレイアウト用紙に鉛筆で線を引いて指定していました。その頃のデザイナー用のシャープペンがこれ。芯を定規にあてて線を引くのでペン先が長くなっています。なにしろ先が細いので、ちょっとの衝撃で先が曲がり使い物にならなくなります。そこで、筒状のガードがスライドして出てきてカバーするようになっています。精密機械のようなつくりで、修理して長く使うような製品です。たしか万とする値段でした。多少高くてもいいものを、直し直し長く使用するというライフスタイル、いいですね。

 伝説のモンブラン・シャープ、PIX No.75。芯の太さが0.92という特殊なもの(一般市販の0.9が使えます)を使うシャープペンシルの王様です。2Bに相当する柔らかい0.92芯をがっちりホールドし、折れずに速記的文章が書けます。これを教えてくれたのは作家の片岡義男さんで、「物書き、編集者はこれを持たなきゃ」といわれて、神田の金ペン堂で思い切って買いました(1970年頃、15000円しました)。写真はキャップがPIX No.75でボディーはNo.350の混血です(両方持っているのですが、流用できるので色を変えて使っています、マニアックな解説ですが)。

 ペン先を斜めからみたところ。線が斜めに入っていますが、傷ではなく芯をきっちりくわえるスリットです。

正面から見たペン先。斜めに曲がった3本スリットが入っていて、柔らかい芯をくわえます。これがこのシャープの最大の特徴で、2Bクラスの芯がこのメカニズムのせいか、力を入れても折れず、長文がスラスラ書けます。とはいえ、ワープロの普及で長い原稿をかくことはありません、もはや。メモに使うにはもったいない性能です。ちなみにオークションで美品は5万円以上するようです(海外でも)。シャープの芯が折れにくくなったためにこの仕組みが必要なくなったのか、単にコストが合わなくなったのかわかりませんが、30年前に生産終了しました。

 スーツのポケットにさすサインペンとしてはアメリカのクロスが知られていますが、エグゼクティブ用サインペンとしてはなんといってもスイスのカランダッシュです。カランダッシュ・ボールペンには、廉価版のアルミから14金までありますが、純金は重すぎるしやはり純銀ボディーが、経年変化を楽しめていいです。写真はミディアムの黒ですが、ペンの太さ、色がかんたんに気分で変更できます。友人が部長になったり、役員になったときはこのペンをプレゼントしました、サインが多くなりますから。でも電子認証が増えてくるとどうなんでしょう。メモを書くのは鉛筆やシャープ、ボールペンですが、はたしてプロフェッショナルな筆記具は生き残れるでしょうか?

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